まめ書架

読書、映画、赤子に翻弄される日々のことなど。

感想-小説など

山崎ナオコーラ『かわいい夫』

お魚の焼け具合を真剣に見つめる眼差し。 毎晩、好きな詩を朗読する声。 お風呂にはいっているときでも、頼まれたらニコニコしながらバスタソースの瓶を開けてくれたりもする。 ことほどさように、山崎ナオコーラさんの夫氏は大変かわいい。 山崎ナオコーラ…

大瀧純子『女、今日も仕事する』

大学をでてみたはいいけれど、就職してみりゃ出世には格差がありあり見える。結婚、妊娠、出産とくれば仕事を手放して当たり前だ。そして30歳を超えてからの再就職は簡単なことではない。 とかく、女の仕事はやっかいだ。 それでも、女はきょうも仕事する。 …

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

姿を見るとぼーっとする。何度も声を思い出す。一緒に飲んだラムネの味を忘れられない。 そういうものを全部ひっくるめて「あのひとが好き」だというのなら、「好き」とは何と頼りないのだろう。 森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(2006年、角川書店) 夜は…

北野勇作『かめくん』

人間みたいに本を読む。ご飯を食べる。料理もする。 でも、人間じゃない。彼はカメだ。 北野勇作『かめくん』 かめくん (河出文庫) 作者: 北野勇作 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2012/08/04 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 21回 この商品を含…

ビル・ストリックランド『あなたには夢があるー小さなアトリエから始まったスラム街の軌跡-』

2016年度私的映画ランキングを作れば3本指に収まるであろう映画『ズートピア』には、こんなセリフが登場します。”世界がキツネのことを、ずるくて信用できないと決めつけるなら、なにをしても意味がない”ズートピアでは、キツネはずるいから信用できない、肉…

平田オリザ『わかりあえないことからーコミュニケーション能力とは何か』

学生のときに読みたかったなあ。 平田オリザ『わかりあえないことからーコミュニケーション能力とは何か』 わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) 作者: 平田オリザ 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/10/18 メディ…

atプラス28号 [特集]生活史

「語りというものは、切れば血が出る。それは生きているのだ。私たちがおこなっているのは、そこで暮らし、生活している個人に直接お会いして、その言葉を聞き取るという作業である。」 ("特集によせて"岸政彦)【特集分冊版】atプラス 28 (岸政彦 編集協力 …

ジョン・アーヴィング『ガープの世界』

みるからに重たそうなカビの生えた埃っぽい単行本を抱えて本に頭をうずめるみたいにして通勤電車にゆられるワンピース姿の会社員を大阪でみかけたら、たぶんそれはわたしでした。 アーヴィングの小説って、絶対そうなるんだよなあ。 ジョン・アーヴィング『…

夏目漱石『それから』

森見登美彦がいつも、腐れ大学生の四畳半的物語を書くように、 村上春樹がいつも、消えた女の子のエピソードを書くように、 タランティーノの映画がきれいな足を撮るように、夏目漱石は、三角関係を書いてしまうのかもしれない。夏目漱石『それから』恋愛は…

小川洋子『ことり』

冒頭30ページで、読み進めるのがおっくうになった。 読み終えてしまうのがいやだった。ずっと読んでいたかった。 小川洋子『ことり』 ことり (朝日文庫) 作者: 小川洋子 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2016/01/07 メディア: 文庫 この商品を含むブ…

カート・ヴォネガット『これで駄目なら 若い君たちへ――卒業式講演集』

知り合いのおじちゃんが、だいぶ前に大学で喋ったのを本にしてまとめたと知り、うれしさのあまりぴょこぴょこ飛び跳ねながらレジに持って行き怪訝な顔をされたのはわたしです。 ハイホー! カート・ヴォネガット『これで駄目なら 若い君たちへ――卒業式講演集…

【エッセイ】岸政彦『断片的なものの社会学』

これは、なんといえばいいのか。 どんな読み方も赦してくれる、ゆるゆるの行間に漂うような読書の気持ち良さ。 どんなわたしにも、ここにいていいよ、と言ってくれているみたいな。岸政彦『断片的なものの社会学』断片的なものの社会学作者: 岸政彦出版社/メ…

阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』

芥川賞作家・阿部和重と、ミステリ小説界のベストセラー作家・伊坂幸太郎。同世代のふたりが合作で小説を書いたと聞いたときは、「なんやそれ!」とおもいました。作風も方向性もぜんぜんちがうふたりが、合作?かたやごちごちの純文学、かたや直木賞常連ノミ…

【小説】エリナー・ファージョン『ムギと王さま ー 本の小べや<1>』

児童書を読んだときの、じんわりとおなかの底が暖まるような幸福感とは、なんなのだろう。 エリナー・ファージョン『ムギと王さま ー 本の小べや』ムギと王さま―本の小べや〈1〉 (岩波少年文庫)作者: エリナーファージョン,エドワード・アーディゾーニ,Eleano…

【小説】谷崎潤一郎『細雪』

日本文学、っていうのがどうにも苦手でした。 いまもそれほど好きではない。 だって日本文学って、箱とかに入ってる。本棚に収まる姿も「わては日本文学やさかいに、そこらの三文小説と一緒にならべてもろたらあきまへんのやで」とでも言いたげなたたずまい…

【小説】宮部みゆき『英雄の書』

あーそうそう、そうなのだ、読み始めたら止まらない、このかんじ。部屋のはしっこに体育座りして、「ごはんやで」って呼ばれるまで何時間でも読んでいた、中学生のころを思い出していた。 宮部みゆき『英雄の書』 英雄の書〈上〉 (新潮文庫) 作者: 宮部みゆ…

【エッセイ】遥洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』

「女は家事をするものだ」 「女は働かなくても別にいいじゃないの」 「女はそういうこと言っちゃいけない」 「だってあなた、女なんだから」 なんで?どうして?という疑問はいつも封じられる。芸能人たる著者は、テレビで発言してもいい(するべき)ことと…

【小説】シオドア・スタージョン『輝く断片』

"いままで女を抱いたことは一度もない。だが、こわくはなかった。"最初の一文で物語の楽しさはだいたい決まる気がする。 これは、好きだ。きっと愉しい。シオドア・スタージョン『輝く断片』輝く断片 (河出文庫)作者: シオドア・スタージョン,大森望出版社/…

【小説】レイ・ブラッドベリ『太陽の黄金の林檎』

何億年もの昔から海の底で生きている独りぼっちの恐竜の怒りと寂しさ。 静まり返った街路を巡回する無人パトカーのやるせなさ。夜の静けさ、宇宙の寒さは、いくら科学が発達しても失われない。忘れたふりをしているだけだ。そういうものを思い起こさせるから…

【小説】アンナ・カヴァン『氷』

夢と現実がないまぜになる。いったいいつから?読み返してみても、境目がわからない。どこから主人公の病んだ精神による妄想なのか。なにが本心なのか。だれにもわからない。共感を禁じられ、何を信じていいのかわからないまま、道に迷った主人公と一緒に、…

【小説】ポール・オースター『最後の物たちの国で』

昨日ここにあったものが、今日はなくなっている。今日はたしかにいたひとが、明日にはいなくなる。こどもは生まれず、身を守る家もなく、泥棒も殺人も犯罪と呼べなくなった。 それがいつごろ始まったのかは、だれにも言えない。 完璧に終わってしまい、もう…

【小説】よしもとばなな『王国 <その4> アナザー・ワールド』

”食べるためにりんごを剥くとか、銀杏を割るとかとほとんど変わりなかった。(中略)命があるから、生きているのであって、なにかを成すために生きているのではない” これはいったいなんだろう。 なんだかとてつもないことだとおもう。 あえて四文字で表現す…

【小説】いとうせいこう『想像ラジオ』

この本を読むたび、死んだじいちゃんのことをおもいだす。もうずいぶん前のことだから、ラジオはやってないかもしれない。それでも、わたしはラジオが聞きたくなる。じいちゃんといまならいろいろ喋れるのに、とおもう。 いとうせいこう『想像ラジオ』想像ラ…

【新書】上野千鶴子『女たちのサバイバル作戦』

なんちゅう時代に生まれたんだ、とおもった。 上野千鶴子『女たちのサバイバル作戦』 女たちのサバイバル作戦 (文春新書 933) 作者: 上野千鶴子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2013/09/20 メディア: 新書 この商品を含むブログ (10件) を見る 「男女雇…

【評論】ヴァルター・ベンヤミン『ボードレール他五篇 ベンヤミンの仕事2』

本を開いて読む。読み進める。途中で何の話をしているのかわからなくなって、すこしもどる。こんなところを読んだ記憶がなくて、いっそ最初から読む。さっきより少し進んだところでまたたちどまる。いったい何の話をしていたのだっけ。また読み返す。すすま…

【新書】中澤二郎『働く。なぜ?』

どうしてはたらくのか、と聞かれて、あなたは答えられるだろうか。 仕事がたのしい?お金が必要?自己実現?社会の一員としての義務? この本は生きてゆくうえで「なぜ働くか」を考えるときに数多湧きおこる疑問へのひとつの回答に、 なると、思って、読んだ…

【対談】上野千鶴子・信田さよ子『結婚帝国』

世は婚活ブーム。誰もかれも、すこしでも「いい男」を手に入れんと女子力をみがきあげている。 そうして結婚したはいいけれど、ダンナに暴力をふるわれたり、不愉快なセックスを強要されたり、四人分(舅・姑・両親)の介護が待っていたり、就労をつづける友…

【詩】西條八十『白孔雀』

あざやかな色彩、きらめく宝石。 隙間にそっと忍び込む、死の陰影。西條八十の詩は、冬がよく似合う。 西條八十『白孔雀』訳詩集 白孔雀 (岩波文庫)作者: 西條八十出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/10/17メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 西…

【小説】フリオ・コルタサル『遊戯の終わり』

今まさに読み終えようとした本の登場人物に背後から刺される男、岸辺に打ち上げられた自分の死体を眺める男、セーターのなかで悶え苦しんでいるうちに12階の窓の外に飛び出してしまう男…現実は夢、夢は現実。 フリオ・コルタサル『遊戯の終わり』遊戯の終わ…

【小説】吉本ばなな『白河夜船』

先の見えない恋が不安だった。友達が死んだことが悲しかった。それもある。 でもそれだけでもない。何も見たくなかった。何も考えたくなかった。 この世の自分の存在証明のようなものを、失いかけていた。ただただ眠かった。 吉本ばなな『白河夜船』白河夜船…