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まめ書架

読書、映画、ときどき音楽。あるいは芝居。

【小説】川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』

(※Facebookより再掲)

すきな男の子に抱かれているときに、冷蔵庫が低くうなりはじめるのを聞いて、あぁこのひとのことを私はすきではないのかもしれない、ほんとうの意味ですきなわけではないのだな、と気づいてしまい、さみしくなったことはありますか。

...いや、別に、冷蔵庫でなくても構わない。たとえばの話。
あったらあなたも、川上弘美的女の子かもしれない。

 

川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』

 

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

 

 

ニシノユキヒコは自分の居場所をさがしている。自分探し的なやつではなく、存在、というような、根源的な意味で。彼には自分の居場所がない。どこにいても、だれといても、彼はさみしさから逃れられずにいる。さみしさの源泉的なものはあるらしいが根本的にはニシノユキヒコ自身の問題である。女の子たちは最初からニシノユキヒコの抱えるさみしさに気づいており、一定の距離をもってニシノユキヒコと付き合うが、やがて、彼と別れる。

川上弘美的女の子たちはニシノユキヒコとであうと、「この人のことを好きになれるかもしれない」とおもう。
「好きになれるかもしれない」...彼女たちは、なりふりかまわず、恋やら愛やら、することができない。それはニシノユキヒコのせいかもしれないが、彼女たち自身の問題かもしれない。

彼のさみしさをどうにかしてあげようと思う女の子はいない。
他者のさみしさを、自分は、自分こそは満たしてあげられるだろうとおもうような女の子に、川上弘美的女の子の資格はないのだから。