まめ書架

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【映画】パオロ・ソレンティーノ監督『きっと ここが帰る場所』

かつて、わたしはおとなになりたかった。いまはときどき、こどもに戻りたいような気もする。でもそう思うのは、わたしがそこそこまっとうに「おとな」になったおかげだろう。

こどものままこの世界を生きるのは、きっと孤独だ。

 

パオロ・ソレンティーノ監督『きっと ここが帰る場所』

 

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かつては一世を風靡したロックスターが、父の死をきっかけに、ナチスドイツの生き残りを探す、という、筋だけ聞くと突飛なストーリー。主人公もなかなかぶっ飛んでいて、年老いて隠遁生活をしている今もなお、ロックスターだった頃のアイシャドウや口紅をしており、奇抜なヘアスタイルと服装で武装している。

 

この映画は、シャイアンが父の過去を探りアメリカを旅することで「おとな」になる、ロードムービーと呼ばれる映画の一種らしい。

 

ロック青年から抜け出せず、おとなになりきれなかった彼は、「おとなの会話」を体得していない。口を開けばひとりごとみたいなことしかしゃべらないし、空気を読まずに発言するのでその場の人が凍りつく。抑揚をつけずに一本調子にしゃべる。それがアーティスティックといわれれば、そんな気もする。でもこのしぐさは、すべて「こども」のものだ。年老いたこども。彼はどんなおとなとの会話も成立させられない。(まわりのおとなはとてもキテレツにみえる)

こどものまま大人になる、というのは、なかなか孤独なことだとおもう。

 

シャイアンはとてもゆっくりと歩く。速く歩けるはずなのに、ゆっくり歩く。

カメラは絶妙な距離感で彼に寄り添い、ゆっくりと動く。

それがなんだか、とても心地いい。