まめ書架

読書、映画、ときどき音楽。あるいは芝居。

リドリー・スコット監督『オデッセイ』

すっごい楽しい映画でした。

 

リドリー・スコット監督『オデッセイ』

※リンクは原作本

 

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 

火星に取り残された宇宙飛行士ワトニーが、知恵とアイデアとユーモアで生き延びようとする話。火星の砂と排泄物でジャガイモを育てたり、古い火星探査機を修理して地球と通信したり、静止画の送受信しかできないカメラで16進法をつかった複雑な会話をしたり...。ワトニーが孤軍奮闘するあいだ、地球では、利権やらメンツやらでちっちゃいいざこざがありつつも、ワトニー救出にむけた動きがくりひろげられていきます。

 

うん、楽しい映画でした。観ていてとてもわくわくする。全編を通して流れるダンスミュージックと、ワトニーのユーモアセンスがすごくいい。それになにより、彼がとにかく魅力的なのです。

 

実は作中、ワトニーがどういう人物なのかは、詳しく描かれていません。いや、ユーモアあふれる人物ということはわかりますが、それ以外、本人の口から語られる自己紹介は「僕は植物学者」ということくらいです。あと、両親が健在で、独身らしい。彼は劇中、始終ダンスミュージックを聴いていますが、それは乗組員がおいて行ったものだし、写真を取り出して地球のことをおもいだすシーンも用意されていない。

 

一日一日を生き延びるために、必要なことを淡々とこなすワトニー。爆発事故があっても、宇宙服がやぶれても、不必要にあわてたり叫んだりわめいたり泣き崩れたりしません。一応そういうシーンもあるが観客には声がきこえなくなっており、彼がどんな暴言を吐いたのかはわからなくなっています。

 

ワトニーは最後にこんなことを言います。

 

「いいか、これは君たちにも起こる」

 

安易に愛やら奇跡やらを信じず、ただ手が届く範囲のことを淡々とこなして生き延びる、これってそういう映画です。だからきっと、ワトニーが魅力的なのは、きっとそういうところです。わたしたちは誰しも、そうやって生き延びるのだとおもいます。